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多摩の三つの動物園

多摩の三つの動物園

平成28年、武蔵野市の井之頭公園の自然文化園の動物園で「花子」と言う永年こども達に親しまれて来た象が69才の天寿を全うして死んだと言う新聞記事を見て、私は多摩の3つの動物園の事を思い出した。井の頭恩賜公園自然文化園は井の頭池の隣にあり、1942(昭和17年)に設立され、動物園と水鳥や淡水魚を飼っている水族館と2つに分れていた。
私は戦後昭和30年頃からずっと多摩をテーマとした写真を撮り続けていたが今度の日曜日は何処へ行こうかと迷っている時、最後に行くと決めるのは夏は五日市の水遊び場、他の季節は井之頭公園であった。4~50年前の話だが、写真仲間では井之頭公園の弁天池の周辺はアベックのメッカと言われ、私達はボートを漕ぐ男女の姿や、池の周辺で読書を楽しむ女性や池を眺めながら語り合う中高年の男女の後姿などを撮影した。また人間だけでなく、池の周辺の自然も春の桜・秋の紅葉と素晴しかった。しかしその時は弁天池のまわりを一周するとすぐに吉祥寺駅へ向って中央線で家に帰って来るのが常だった。
動物園へは一度行って、1954年(昭和29年)タイから贈られて入園した象も見たが、その当時は象よりも写真に夢中だったので象の印象は薄かった。しかしその後、象は長い間多くのこどもに愛されていたようで「花子」が死んだ後、現在の法律の基準では今まで飼っていた所では狭すぎて、新しい象を入れることが出来ないので「花子」の盛大なお別れの会を開いて別れを惜しむと同時に、新しい象が飼育出来るような新しい動物園を作るための動物園移転署名運動が始まったと言う。武蔵野市にそんな広い場所があるかどうかは知らないが、署名運動が成功し新しい動物園に花子のような象が来園し、多くのこども達に愛されるようになることを心から祈っている。
象と言えば、多摩動物公園の2頭の象が私には印象が深い。多摩動物公園は立川のすぐとなりの日野市にあり、確か京王線、多摩モノレールの多摩動物公園駅のすぐ前にあった。この動物園は1958年(昭和33年)5月5日に創立された広い本格的な動物園である。ここは広くて坂もあり小さいこどもなどを連れて行くには大変な所もある。私は撮影のため、何回か多摩動物公園を訪れた。
象のいる場所へ行くと、いつも2頭の大きな象が柵の向うの水濠近くまでゆっくり歩いて来て迎えてくれた。
聞いた所によると、1967年(昭和42年)にメスのタカコ・アチャコが入園したと言うが、私が行った時にはオスメス各1頭だったように記憶している。多分象は国際的に絶滅のおそれのある希少動物に指定されていたので象が死んでもその後輸入することが難しかったのであろう。
この動物園で印象に残ったのは、広い場所にライオンが放し飼いになっており、その中にコンクリートの道路があって、切符を買ったお客を小さなバスのような車に乗せてその道をぐるぐる廻ってライオンを見近に見られる様になっていた。ライオンは餌がほしいのか、なれているのか、ガラス窓を素足でガリガリやるのが怖くもあり面白くもあった。
確か別の動物園であったと思うが、その動物園ではバスのほかに自家用車での通行も許していたが、ある時前の車に息子夫婦が乗って後の車にじいさん・ばあさんと孫の男の子が同乗しじいさんが運転し前の車と少し離れて運行していた所、孫の男の子が大きな声で前の車の親の所へ行きたいと泣き出したので思わずじいさんが孫を前の車の息子夫婦に渡そうとしてドアを開けて外へ出た所、ライオンに噛まれて死んだ事件があった。そんな事件が影響したのかどうか解らないが、問合せた所現在改造中で、一時閉鎖しているとの事であった。
もう一つ思出に残っているのは、昆虫生態園の事であった。昆虫生態園の中には常に真夏のように30度近い温度に保たれいろいろな色の蝶々をはじめ、いろいろな昆虫が飛びかい、とても面白い所があった。行った時が11月下旬だったと思うが、外は冬の温度で、あまり中の温度と外の温度がちがうので風邪を引いてしまい、なかなか治らないで困った事があった。
もう一つ多摩にある動物園は羽村市にある羽村市立動物園である。
青梅線羽村駅北口を降りるとすぐ駅前に「まいまいず井戸」がある。
まいまいず井戸は鎌倉時代まだ縦に深い井戸を掘る技術がなかったので、らせん状にだんだん深く掘って水が出た所で井戸が出来たので形が「かたつむり」に似ているという意味でまいまいず井戸と呼ばれた。私は古い井戸はいくつか見たが、この様にらせん状に降りていって底の方に井戸がある井戸は他に見たことがない珍しい井戸である。このような井戸は大同年間(806-810)に創始されたとの説があるが典拠がないという

昭和55年(1980) まいまいず井戸 羽村
昭和55年(1980) まいまいず井戸 羽村

 

ここから北へ10分位歩くと羽村動物園がある。大きな動物園ではないが、キリンが顔をなでられる程近くまで来たり、小型のレッサーパンダがいたりして子供達を連れて行くのはもってこいの動物園である。又寒い所にしかいないペンギンも温度調節が出来ているのかたくさんいて、とても面白かった。

平成25年(2013)10月
平成25年(2013)10月

2018-10-18 11:06:00

榎本良三のエッセイ