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櫛・かんざし美術館を訪ねて

櫛・かんざし美術館を訪ねて

榎本良三

最初、庭園のある博物館のような所へ行く考えもあったが、そこが、開園する日が不定期であったので場所を変更した。「沢乃井」という三多摩では有名なお酒を作っている酒蔵である小沢酒造が経営している「櫛かんざし美術館」は、御獄の沢井にある。櫛かんざし美術館は、多摩川の上流の谷間の橋を渡った所にあり、その橋は小沢酒造のある所から少し手前にあったように記憶している。そこは駐車場も広く、建物も美しい建物である。パンフレットを読むと世界的に有名な岡崎智子さんの40年に渡るコレクションを中心にして収蔵されているという。私は岡崎智子さんを知らないが、おそらく北斎や歌麿呂の作品がそうであるように、外国の影響を受けない日本の伝統的な工芸品として評価され有名になっているのだと思う。私はそんな日本の櫛やかんざしをつけて、美しい女性の着物姿を連想すると何となく行って見たいような気になった。美術館まで立川からはかなり遠く、タクシーで1時間近くかかると予想されたので私はかつて車に1時間近く乗った所、途中で腰が痛くなった経験があり、また今回も同じような事になるかも知れないという不安もあったが、それを振り切って出掛けた。幸い今回はそのような事もなく、無事に美術館についた。

櫛かんざし美術館を訪ねて
櫛かんざし美術館 2019年1月 青梅市

前述した通り、私は櫛やかんざしのことは何もわからなかったが、同行して頂いた介護サービスのかたが女性なので、そのかたに聞けば何とかなるだろうと思っていた。
 美術館の中に入って見ると象牙や夜光貝で作った螺鈿(らでん)や、珊瑚(さんご)などをあしらった立派な櫛やかんざしが並んでいた。普通の人が使っていた櫛やかんざしも片隅の方に少し並んでいたがそれと較べるととても高級で美しく見えたが、一部の上流階級の人が使っていたのかなあという感じもした。

櫛かんざし美術館を訪ねて
櫛かんざし美術館 2019年1月 青梅市

建物は3階になっており地下1階と地上2階の建物であり、私達は地上1階と2階の建物しか行かなかったが、2階では多摩川に向って反対側からガラス越しに多摩川を中心として奥多摩の美しい風景を見る事が出来た。

櫛かんざし美術館を訪ねて
櫛かんざし美術館 2019年1月 青梅市

私は時々車椅子を止めてもらって、夢中でシャッターを切った。しかしガラス越しではやはり出来上った写真を見ると、どこが悪いと言うのでもないが何となく物足りないような気がした。

櫛かんざし美術館を訪ねて
櫛かんざし美術館 2019年1月 青梅市

また館内には浮世絵も数点展示されていて、展示の内容について色々と解説の放送をしていたが、やはり素人の私にはよく解らなかった。若沖や北斎、歌麿呂などの作品についてはテレビで良く見ていたが、特に髪やかんざしだけをよく見ていたわけではなかったからである。しかしかつて、ある所で浮世絵の展覧会を見て、浮世絵の原画が意外に小さかったのが印象に残っている。この美術館に展示されていた浮世絵も同じように小さいと思った。彫刻した作品から刷ってブロマイドの様に売っていたのだから、小さいのが当然であろう。
 美術館から出たときは、展示されていた櫛やかんざしが美しかったという感じがそれほど残らなかったが、美術館を出てもう一度建物を見てから、あらためて美術館の建物の美しさを感じ、こんな美しい建物は今まで見た事がないと思った。私にとっては美術館内の収蔵品と共に美術館そのものの美しさを見たことは大きな収穫だった。

櫛かんざし美術館を訪ねて
櫛かんざし美術館 2019年1月 青梅市

タクシーで行く車内で、ずっと途中の町並を見ながら目的地まで行ったが、残念ながら現代日本の町並はただ色々な建物が雑然と建っているだけで、そこに美しさもなく統一もなかった。その点、木造建築だけで統一された江戸時代の町並の美しさにはるかに劣ると思う。
そんな事を考えながらタクシーに乗っていたが復路は下り坂なので往路よりはるかに短い時間で老人ホームに到着した。途中に昼食用弁当をスーパーで買ってもらい、ホームの部屋で一緒に食べて、1時頃解散した。

2020-05-01 11:17:08

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