坂本謙郎
研究職でいた頃、会社勤務が相当過酷で、毎日二カ所の職場を掛け持ちして交互に勤務し、家に帰るのはいつも午前様だった。残業が百時間を優に超えたとき、ついに十二指腸潰瘍で手術をすることになってしまった。会社に復帰する前に自宅で静養をしていた時、花屋で見かけた、紫色のセントポーリアを買ってきて育てることにした、
その頃はセントポーリアの最盛期で、ちょっとしたどこの花屋でもセントポーリアを売っていた。私は本来小さいものが好きだったので、ミニ種ばかり集めた。その頃は流行の最盛期だったので、ものすごい数が売られていた。それで、それまで関心の余りなかった人までも買って育て始めた。
セントポーリアという名だけで、はじめは何も判らず始めたのだが、わたしの持ち前の凝り性が出てきて、本格的に育て始めた。
ヨーロッパやアメリカでは昔から大きな組織団体が古くからあって、アメリカなどは州毎にアフリカンバイオレット(セントポーリア)ソサエティなる団体があって活発な活動を古くから行っていたが、日本のように一過性でなく、コンスタントに活動をしていた。日本は本当に一過性で、今では殆ど見かけない。新宿の京王デパートの屋上に、かなりの数が揃っていたが、今は見る影もない。あっという間に消えていくところは、コロナ騒ぎの時のマスクやアルコール、そのまえのトイレットペーパーを思い出す。
セントポーリアとはどんな植物だろうか?原産地はアフリカの、ウザンバラという土地に原生していたイワタバコ科セントポーリア属(和名はアフリカスミレ属)の植物の総称で、光の好きな植物でスミレよりは肉厚である。この植物の特徴は葉をとって、土に挿しておくだけで新芽が出て根を張ることで、この性質を使って葉を郵便封筒に入れて送ることが出来る。一見タフに見えるが、他方で弱い面もある。外で寒気に当てると、すぐにだめになり、暑すぎると、ぐったりしてしまう。消毒を怠ると直ぐにダニがついて花が咲かなくなり、葉がしわが出てしまう。そのほかにもシャワーをやらないとすぐにご機嫌が悪くなるなど、誠に扱いにくい。
特にわたしの集めていたミニ種はそれがはげしい。温室に入れて120鉢ほど手入れしていたが、全部の手入れが終わるまで半日かかった。植物は大切にしてやるかどうかで、全くご機嫌がちがってくる。