秋川の魚釣り
秋川の魚釣り
坂本謙郎
私たちの子供のころは、秋川の水も豊かで、澄んで綺麗で、川底には色々な藻が生えていた。そのころは学校から帰ると鞄を投げ出して夏の暑い日照りの中に飛び出して行き、川遊びに励んだ。今のように親がうるさく言うこともなく、夕暮れになるまで遊びほうけていた。
この時代には河川の一般の規制がゆるやかで、母親たちも余りうるさくなく、川で実際に事故が起こることは稀であった、むしろ子供たち自身でお互いに気を付けあっていたように思う。
魚の種類は鮒、鯉、ドジョウ、メダカ、鮎、ぎんぎょ(ギバチ:ナマズに似た淡水魚で現在絶滅危惧種)、ハヤ、川エビ、鰻、ナマズなどなど数十種類にのぼった。
川の深さは平均3~40cmで、もっとも深いところでは2~3m位であった。今は殆ど魚釣りをする人がいなくなり、多くの人が出てくるのは、鮎とマスの放流の時ぐらいで、この時期は魚より人のほうが数が多いぐらいである。
魚を釣る人が少なくなるとともに漁法もすたれかけてきた。魚の習性をうまく利用して獲る漁法も言い伝える人がいなくなり、受け継ぐ人もいなくなって本当に残念である。漁法を教える人々も、川に自由に行ける子供たちもいなくなって、大げさに言えばそのノウハウが伝わらなくなっている。それにかわってスマホ等の人工の道具で、自然に全く触れないで済む環境になってしまった。小さい事だが自然を感じ、自分の手で工夫をする機会が全く閉ざされてしまった。日本らしい風景がどんどん失われていくようだ。
ここに秋川で遊んだ子供の頃の魚獲りの方法をいくつか書いておきたい。
あんま釣
誰でもできて,そこそこの収穫が得られたのがこの釣り方ではないだろうか。竿に糸をつけてその先に川虫(カゲロウの幼虫)をつけ、流れの川下に向かって全てを水中につけて、引いたり緩めたりしていると、自然と魚が食いつく、場所さえ良ければ子供でもかなりの漁獲が得られる。魚がかかった時の感触はなかなかのもので、癖になる。子供でも大人でも、男女にかかわらず出来るのが楽しい。
叩き釣り
今では全く影を見ないが、場所と機会があればできないことは無い。川の流
れの淀んだところを選んで、後ろにある程度の空き地が有るロケイションが必要である。場所が決まれば、あとは緩やかな水面にさなぎの粉(お蚕の蛹の粉)をすこしずつ撒き、餌に吸い寄せられてくる魚が水面で蛹の粉を争って食べるようになったら、1メーターばかりの竿に糸をつけ、疑似餌をつけた顎のない針をつけ、餌取りに夢中になった魚の輪の中に投げ入れて(1)食いついたと同時に後ろに引きあげる(2)。かかった魚は後ろの地面に針から離れて転がる(3)。大漁の時は後ろの地面が魚だらけになる。魚をうまく集めることが出来れば、無精な魚つりである、海でいうカツオ・マグロの一本釣である。
桶ふせ
次に魚がバックできない性質を利用した自動捕獲法である、桶ふせ。
普通は味噌樽、酒樽など利用してトラップを作る。図のような仕掛けで、エサは蛹の粉と小麦粉を練ったものを樽の底に練りつけて、川底に埋め込んで一日ばかり置いて、取りに行く。上手くいけば、鰻やハヤやフナなどが獲れる。何が獲れているかわかるまで楽しみである。
こんな漁法はだれがいつ、どう考えたついのか?何も伝承が無いので、自然消滅になるのだろうか。
鮎釣り
今でも現役の釣りは鮎の友釣りで、時期になると、太公望が川岸狭しと並ぶ。鮎は天然はほとんどいないので、養殖の鮎を放流する。人が大勢出るので、2,3日で釣りきってしまう。昔の様な、のんびりした情景は見られない。秋川が本来の釣場として、賑わうのは鮎の季節ぐらいだろう。ゆったりとした時の流れに身を任すような時代はもう来ないのだろうか。
投網漁
この漁法は一般的に使われる方法だが、「一網打尽」の言葉のように、ある範囲の魚を一挙に根こそぎ獲ってしまうので、禁止されている場所もある、
この漁法で難しいのは、網をできるだけ広い範囲に広げるテクニックである。もうこの辺では、投網を打てる技術を持っている人が全く居なくなってしまい、秋川ではこの方法を使えなくなっている。残念だが時代の流れであろう。
2020年10月 秋川
2021-03-31 12:01:28
坂本謙郎のエッセイ
| コメント(3)
コメント
私が子供の頃 釣り好きな父が私と兄を多摩川に連れていってくれたのを思い出して
懐かしくなりました
色々な漁法があるのですね 叩き釣りは豪快な釣りですね
夫も川育ちですが 叩き釣りは初めて聞いたと言っています
イラストもわかりやすく しかもユーモラスで可愛いです
父はただ 小麦粉と何かを練ったものを丸めておだんごした えさを使っていたので
あまり 釣れていた記憶はありませんが(ほとんどハヤ)釣り竿等道具を大事に楽しそうに手入れしていました
釣果はともかく その時間を楽しんでいたんでしょうね
伊藤友紀
/ 2021-06-12 15:14:14
たえこ様
まだ漁業組合が健在だとは驚きで、
坂本 謙郎
/ 2021-05-10 16:13:59
私は榎本邦子の娘の多恵子です。子供の頃多摩川でよくあんま釣りをしました。拝島の多摩川も自然破壊が進み魚が捕れなくなっているようです。釣り人もあまりいません。でも秋川漁協の拝島支部は今も活動を続けています。私の夫は漁協の組合員です。拝島には投網同好会が今もありメンバーは老人が多いようですが、活動はしています
森田多恵子
/ 2021-05-01 22:38:50