ニューヨークの仕事が終わって、帰国することになったので子供たちにお土産を買うことにした。
地図で見てマンハッタンのメイン通りの北の方におもちゃ屋があるが解ったので、そこに買いに行こうと思ったが、うまく探せなくて、道を歩いている人に地図を見せてその場所を聞いた。 ところが、道を聞かれた人が聞いた本人の私を無視?して三人の通行人が、今の言葉でいえば”超親切“に議論しだした。市内観光の時と同じだった。ニューヨークでは惨めな経験をしたというよりは、親切な人びとに満ち溢れているように感じた。勿論そんな甘い世間ではないことは承知だが、たまたま運がよかったのかも知れない。
恋女房にはブロードウエイにあるグッチでショルダーバッグを買った。その頃の有名店の中には人相を見て安全と思われる人だけ、ガードマンがドアのスイッチを解除して開けてくれるような、セキュリテイの厳しい店もあった。
帰る段になって事務所のYさんからユタ州ソルトレイクシティーの有名な教会でクワィアー(聖歌隊の合唱)が有るから帰りに見て帰ったら、と言われ、珍しいし、めったに行けるところでは無いので、勇気を出して行くことにした。その教会はユタ州の首都、ソルトレイクシティ-にあり、モルモン教本山のクワィアーで、クリスマスの特別公演だった。なんとも素晴らしい雰囲気でクリスマスの夕べを堪能した。モルモン教と言えばその昔、信者が、日本に来て信者の勧誘をしていたこを、ご存知の方も居られのではないか?
ユタ州は禁酒だと聞いていたが、うっかりしてホテルでウイスキーを頼んだとところ、売っていない、ということだった。不思議に思ってよく考えてみると、禁酒だったのにすっかり忘れていた、お粗末! 後で聞くことによると、バー以外で飲める場所があるとか、お金を払えば飲めるということだが、ホテルでウイスキーがあるか聞いただけで、そんな奥の手を教えてくれる訳がない。
そこから長い貧乏仕事を終えて無事に帰国した。これ程、全く想像もしなかった未知の世界に没入し、危険に耐え、仕事と言葉を覚えながら苦労したのがそれからの人生に随分役に立ったと思う。
There is a will, there is a way で、今でも懐かしい思い出である。