写真技術の輸出話
私どもが会社員になって10数年たったころ、映画用のフイルムプラントの輸出の話が、コニカにソ連(旧ソビエト連邦)と中国から来た。フイルム産業は世界でも企業数が少なく、世界的に独占企業であった。どちらかと言えば、ノウハウのかたまりであったので、輸出の是非についてはその可否を巡って大論争になったが、最終的には両国についてOKが出た。我社にはもともとプラント輸出部なるものがあって、自社のプラントを海外に輸出する業務を担っていたため、その部署がソ連、中国の両方を担当した。ソ連は比較的早期に輸出がはかどり、日本から材料を供給している間は少量ながらフイルム生産が出来たようだが、途中で全く中止になった。理由は純度の高い薬品が自国で生産できないためだったようで、機材も風雨にさらされて使い物にならなくなったようだ。一方中国は、途中までしか進まず、何人もの見学団が来たことがあったが、見学コース以外に数人がいろいろなところに勝手に入り込んだりして、トラブってその先には話がすすまなかった。技術を勝手に手に入れようとする中国のその性向は今でも起きているほかの問題と変わらない。
結局アナログフイルム産業は殆ど化学技術を応用したもので、いわゆる"水系"システムで、しかも全暗黒という制約の多い環境でおこなわなければならず、研究負荷、コスト、商業ベースの複雑さなどから見て"ドライ系"というデジタルシステムに叶わない必然があった。