幼い頃に ファーブルの昆虫記を読んで昆虫の素晴らしい行動に大変感激したことをよく覚えている。よくここまでに昆虫の生態を観察したものだ。相当な情熱と努力が必要だったと思う。その本がきっかけで子供の頃、昆虫や鳥などの帰巣能力に驚き、興味をもった。
今も行なわれているイベントに、伝書鳩のスピード競技があり、全国の伝書鳩を一定場所から同時に空中に放し、自宅鳩舎に到達する時間を競争する。出発点から同時に鳩を放すとそれぞれのグループは空を3回まわったのちに自分の鳩舎に向かってまっしぐらに飛んでゆく。出発点からの到着時間で順位が決まるようだが出発点の上空で数回空を回っただけで、目的地を即時見出せるなんて本能だとしても人間ではとても出来そうにない。
人間は頭を使って星かあるいは太陽を基準に航海術として進化させた。それに比べ昆虫、鳥などは自分の本能で行動する。
虫のなかで目的地に行ける本能をそなえている一番シンプルな例に蟻がある。彼らは外にでて獲物を見つけた時、大型で自分一人では持ちきれない場合は、巣に帰って援軍を頼み、餌と巣の間に人間の目には見えないフェロモンの道を造り、その道しるべの上を伝って往復する。ちなみにその道上の土を取り除くと、運送の隊列が崩れてしまうので、再度その道を探しフェロモンの道を造りなおすのに、暫くかかる。
ミツバチではもっと巧妙な仕組みがある。蜜を探しに出かけた一匹が巣に帰り、仲間の前でみつけた蜜のある場所を距離と方向を示す踊りで表現し誘導する。そしてその踊りで仲間が一斉に蜜のある方向へとびだすのである。飛んでゆく方向は太陽を基準にしているといわれている。
本能だけとは言えないかもしれないが、私が経験した帰巣例がある。昔、奥多摩の私の家に高円寺の牧師さんからダルメシアンの成犬を預かったが、一週間でいなくなった。そうこうしているうちに二ヶ月たって、牧師さんの自宅に帰ってきたと知った。どこをどう探して帰ったのであろうか。方向と嗅覚をたより迷いに迷って探しに探してやっと到達したのであろう。この場合はどんな機能を使ったのだろうか?今になっても謎である。
先ほど伝書鳩の事を述べたが、もっと壮大な例がある。それは世界をまたにかけた渡り鳥の例である。
この件については、写真クラブの仲間であり世界的な野鳥の専門家で工学のドクターでもある角南英夫氏に伺った。
それによると米国地質調査所の研究チームは、オオソリハシシギのメスに小型の電波発信機を取り付け人工衛星によって飛翔の経路を追跡した。それによってアラスカからオーストラリアの南のニュージーランドに到達までに約1万680キロを飛び続けたと判った。小型のオスは体が小さいため最長7390キロだった。この間飲んだり食べたりした形跡は全くないという。単純計算すると、11.680km÷(24時間×9)で時速54Kmとなる、此の飛行距離は現在のジャンボジェット機なら日本からヨーロッパまでの直行便クラス言えよう。飛行する方向は昼間なら太陽で夜なら星か地磁気だろうと推定されている。